現寸検査から超音波探傷検査まで全工程を写真付きで徹底解説
もし現場搬入前の検査を知らないまま鉄骨を受け入れたら、どうなるでしょうか。
建方でボルトが入らない。柱が傾く。最悪の場合、構造的な欠陥につながることもあります。
「鉄骨って、工場から届いたらそのまま建てるだけじゃないの?」そう思っている方も多いかもしれません。
しかし実際には、現場に入る前に何段階もの厳しい検査をクリアしています。
この記事では、鉄骨の現寸検査・製品検査の全工程を、現場のナマ写真と共に分かりやすく解説します。
- テープ合わせとは何か
- 書類検査で何をチェックしているか
- 寸法精度検査の具体的な許容差
- 目に見えない溶接欠陥を見つける超音波探傷検査
この記事を読めば、鉄骨がどれだけ緻密な検査を経て現場にやってくるのか、きっと分かります。
目次
現寸検査から超音波探傷検査まで全工程を写真付きで徹底解説..........................1
目次............................................................................................ 2
鉄骨検査の全体像|5つの工程でチェックしています.............................................. 3
工程1:現寸検査|図面通りに製作されているかを確認......................................... 3
検査のスタートは「テープ合わせ」................................................................................ 3
工程2:書類検査|社内検査結果とミルシートを照合............................................. 5
工程3:寸法精度検査|実際に鉄骨を測る「対物検査」........................................ 5
工程4:溶接部検査|鉄骨の“命”を守る最終関門..................................................... 11
超音波探傷検査(UT)で内部の欠陥を検出............................................................... 12
鉄骨検査の全体像|5つの工程でチェックしています
まずは全体の流れを見てみましょう。鉄骨の検査は、大きく分けて5つの工程で進みます。
- テープ合わせ(製作前に原寸で寸法を確認)
- 書類検査(ミルシートや製作図書を確認)
- 寸法精度検査(長さ・孔径・角度などを測定)
- 超音波探傷検査(溶接部の内部欠陥を検出)
- 現場搬入(検査合格品を現場へ搬入)

この5つのステップを、ひとつずつ詳しく見ていきます。
工程1:現寸検査|図面通りに製作されているかを確認
最初に行われるのが「現寸検査」です。製作する部材の寸法・形状・細部の構造を、設計図書と照合して確認する作業です。
昔は「現寸場」、今はCADが主流
昔は現寸場と呼ばれる部屋がありました。床全面が黒板になっていて、原寸大の図面を墨で描いて確認していたんです。
しかし今は違います。CADを使って、画面上で寸法チェックを行うのが主流になっています。
検査のスタートは「テープ合わせ」
現寸検査のスタートとなるのが「テープ合わせ」です。工場で使用する基準巻尺と、現場で使用する巻尺の誤差を、事前にチェックする作業です。
現場と工場の巻尺に大きな誤差があると、建物全体の寸法がずれてしまいます。
使用するのはJIS1級品の鋼製巻尺です。所定の標準張力をかけた状態で、JIS基準の許容差内に収まっているかを確認します。
まずは巻尺の「0点」がずれていないかを確認します。

次に、巻尺の中間点でも誤差がないかをチェックします。

最後にテンションゲージを使って、巻尺に正しい張力がかかっているかを確認します。

地味な作業に見えるかもしれません。しかしこの一手間が、後の全工程の精度を担保する大前提になっています。
工程2:書類検査|社内検査結果とミルシートを照合
製品検査の最初のステップは「書類検査」です。鉄骨製作業者が実施した社内検査の結果記録を確認します。
柱や梁の寸法精度が、許容差内に収まっているかをチェックするためです。
また、使用された鋼材が設計図書通りの材質であるかも確認します。このとき照合するのが「ミルシート」、つまり鋼材の検査証明書の原本です。
ミルシートには、鋼材の化学成分・機械的性質が記載されています。設計で指定した鋼種と一致しているかを、ここで確認するわけです。
もし書類が揃っていない、あるいは記録に不備があれば、その時点で製品の受け入れはできません。
工程3:寸法精度検査|実際に鉄骨を測る「対物検査」
書類確認が終わったら、いよいよ実物を測る「対物検査」に移ります。屋外ヤードに並べられた鉄骨を、メジャーや直角定規を使って一つ一つ実測していきます。

確認する項目
対物検査で確認する項目は、主に次の通りです。
- 柱・梁の長さ
- せい、フランジ幅、ウェブ厚
- 曲がり
- 仕口部の寸法
- ボルト孔の位置と径

許容差はどのくらい?
許容差は、公共建築工事標準仕様書に規定されています。具体的には、次のような数値です。
- 柱の長さ:±3mm
- 梁の長さ:±3mm
- 柱の曲がり:長さの1/1000以下
- ボルト孔径:+0.5mm/-0mm

たった数ミリの世界ですが、この精度が守られていないと、現場でボルトが入らないといったトラブルにつながります。

複数人でメジャーを当て、記録用紙にチェックを入れながら進めていきます。

ボルト孔の位置なども、細かく確認していきます。
画像:ボルト孔部分を確認している様子

一本の鉄骨だけでなく、現場に搬入する部材すべてが対象です。
複数人で鉄骨をチェックしている様子

もしここで不良が見つかれば、その場で是正を求めます。現場に入ってからでは手遅れだからです。
梁の仕口部を測定している様子

工程4:溶接部検査|鉄骨の“命”を守る最終関門
最後は、鉄骨の“命”とも言える「溶接部」の検査です。
まずは外観検査
まず外観検査として、溶接ビードの表面を目視で確認します。チェックするのは、次のような欠陥です。
- 割れ
- アンダーカット
- オーバーラップ
- ピット
欠陥種類カード

例えば「割れ」は溶接部にヒビが入った状態、「アンダーカット」は母材が溝状にえぐれた状態です。「ピット」は表面にできる小さな穴のことを指します。
しかし、目視の外観検査だけでは不十分です。
超音波探傷検査(UT)で内部の欠陥を検出
溶接内部にできる、次のような欠陥は外から見ても分かりません。
- 未溶け込み
- 融合不良
- ブローホール
そこで登場するのが「超音波探傷検査(UT)」です。超音波を溶接部に当て、内部からの反射波を解析することで、目に見えない欠陥を検出します。
超音波探傷検査の様子

第三者機関による抜き取り検査と、工場の社内検査の結果を照合します。
こうして、品質が確実に担保されているかを検証していくのです。
超音波探傷検査を複数人で確認している様子

まとめ
今回は、鉄骨の現寸検査・製品検査の全工程を、ナマ写真と共に解説しました。振り返ると、鉄骨は現場に届くまでに、次のような工程を経ています。
- テープ合わせ(巻尺の誤差確認)
- 書類検査(ミルシートとの照合)
- 寸法精度検査(実測による確認)
- 超音波探傷検査(溶接内部の欠陥検出)
これだけの工程を経て、初めて鉄骨は現場に搬入されます。私たちが安心して過ごせる建物は、こうした緻密で厳格な検査によって支えられているんです。
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