鉄骨工事

40分で理解するスタッド溶接 (建築工事編)

2009年3月13日

「スタッド」とは鉄骨とコンクリートを一体化するため、鉄骨の母材に溶接で取り付けるボルトなどの鋼棒の呼び名です。

この溶接作業工程を「スタッド溶接」と称します。

鉄とコンクリートを、効率よく経済的に一体化するために、スタッドは用いられます。

鉄骨造において、梁の上に取付けて、デッキの上に打設するコンクリートとの一体化を増大させたり、鉄骨柱に、根巻きコンクリート(鉄骨の柱脚部をコンクリートで固めること)を打設する際に、同じように一体化させるようなときに、使用します。
さて、実際の施工方法です。

スタッドと呼ばれるピン(ネジなど)を、専用ガンに取り付けて、母材に押し当てて、スイッチを入れます。

専用ガンと専用溶接機によって短時間で自動的に溶接が行われます。

軸径19ミリで約1秒間程度です。

スタッド溶接は、溶接棒や溶接ワイヤーを用いず、スタッドそのものが溶接材となります。

よって、スタッドの化学成分はもちろん、太い断面積に安定したアークを発生する溶接装置などが、溶接品質を保つ重要な要素になります。

もう少し、詳しく述べますと、建築の鉄骨工事で主として使用されるのは、アークスタッド溶接です。

アークスタッド溶接は、アークシールドと呼ぶセラミックスの保護筒内で母材とスタッド間にアークを発生させ、その発熱により母材及びスタッドを溶融し、一定時間後、スタッドを母材面上に形成された溶融池に圧入して接合する溶接法です。


以下、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「建築工事監理指針」より抜粋です↓

 

スタッド溶接作業における技能資格者

(a) スタッド溶接作業を行う技能資格者は,JASS 6 付則4[スタッド溶接工技術検定試験]により,工事に相応した技量を有する者とする。

(b) 溶接技能資格者の技量に疑いを生じた場合は,工事に相応した試験を行い,その適否を判定し,監督職員の承諾を受ける。

スタッドの仕上り精度

(a) 仕上り高さは,指定された寸法の±2mm以内,傾きは5°以内とする。

(b) 母材及びスタッド材軸部に発生したアンダーカットは,0.5mm以内とする。

スタッド溶接施工

(a) スタッド溶接は,アークスタッド溶接の直接溶接とし,原則として,下向き姿勢とする。

(b) スタッド溶接用電源は,原則として,専用電源とする。

(c) 施工に先立ち溶接条件を適切に設定する。
溶接条件の設定は,スタッドの径が異なるごとに午前と午後それぞれ作業開始前2本以上の試験スタッド溶接を行い定める。

(d) 磁気吹きの影響を受けるおそれがある場合は,その防止に必要な措置を講ずる。

(e) 溶接面に,水分,著しい錆,塗料,亜鉛めっき等溶接作業及び溶接結果に障害となるものがある場合は,スタッド軸径の2倍以上をグラインダー等により丁寧に除去し,清掃を行う。

(f) デッキプレートを貫通させてスタッド溶接を行う場合は,事前に引張試験,曲げ試験,マクロ試験等を行って溶接部の健全性が確保できる施工条件を定める。

スタッド溶接後の試験

スタッド溶接完了後,次により試験を行う。

外観試験

(ⅰ) 母材及び材軸部のアンダーカットの有無を,全数について確認する。

(ⅱ) 仕上り高さ及び傾きの試験は,次による。

① 試験は抜取りとし,スタッドの種類及びスタッド溶接される部材が異なるごと
に,かつ,100 本ごと及びその端数について試験ロットを構成し,1ロットにつき1本以上抜き取る。

② 仕上り高さ及び傾きは,測定器具を用いて計測する。

③ 試験したスタッドが合格の場合,そのロットを合格とする。

④ 試験したスタッドが不合格の場合は,同一ロットから更に2本のスタッドを試験し,2本とも合格した場合は,そのロットを合格とする。
それ以外の場合は、ロット全数について試験する。

打撃曲げ試験

(ⅰ) 抜取りは,(1)(ⅱ)①による。

(ⅱ) 打撃により角度15°まで曲げたのち,溶接部に割れその他の欠陥が生じない場合は,そのロットを合格とする。

(ⅲ) 試験したスタッドが不合格の場合は,(1)(ⅱ)④による。

(b) (a)の試験結果の記録を監督職員に提出し,不合格となったスタッドは,7.7.6による補修を行う。

不合格スタッド溶接の補修

(a) 母材又はスタッド材軸部に深さ0.5mmを超えるアンダーカットの発生したものは,隣接部に打増しを行う。

なお,母材にアンダーカットを生じたスタッド材の処置は,(c)による。

(b) 仕上り寸法が不合格となったスタッド材及び打撃曲げ試験で割れ又は折損の生じたスタッド材は,隣接部に打増しを行う。

(c) (a)及び(b)の不合格スタッド材で欠陥が母材に及んでいる場合は,スタッド材を除去したのち,予熱して補修溶接を行い,グラインダーで母材表面を平滑に仕上げる。

(d) (a)及び(b)で,隣接部に打増しができない場合は,(c)により不合格スタッドを除去したのちに打直しを行う。

(e) 打撃曲げ試験により,15°まで曲げたスタッドは,欠陥のない場合そのまま使用する。

(f) (a)から(d)により補修を行ったスタッドは,全数について7.7.5(a)(1)に準じて試験を行い,その結果の記録を監督職員に提出し,承諾を受ける。

施工に際しては、上記のような細かな規定と、材料メーカーによる指針等もありますので、十分な施工計画のもとに品質管理をすることが大切です。

某鉄骨造倉庫で使用した、実際のスタッドピンと、スタッド溶接用アークシールドですの写真です↓
(クリック拡大)
スタッド材料01 スタッド材料02

引き続き、専用ガンによる溶接施工状況写真と、完了写真です↓
(クリック拡大)
スタッド溶接01 スタッド溶接完了01

 

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